小泉進次郎農林水産大臣(44)は9月20日、自民党本部で行われた会見にて「自民党を立て直すため、先頭に立つ決意で総裁選に挑戦する」と表明した。具体的な公約として掲げたのは、2030年度までに国内投資135兆円・平均賃金100万円増という野心的な数字である。さらに「なまごえプロジェクト」と称して、地方や都市を問わず国民の声を直接聞く場を設けると宣言した。
このような“解党的出直し”の姿勢は、かつて父・小泉純一郎元首相が掲げた「自民党をぶっ壊す」というスローガンを想起させる。小泉家の政治的DNAを受け継ぐ姿勢は明確だ。
政策公約の詳細分析
小泉氏の公約の目玉である「国内投資135兆円」は、成長戦略として明確に“量”を示した点が特徴だ。過去の政権が抽象的な「成長率」や「目標数値」を掲げるに留まったのに対し、投資額を直接打ち出すのは挑戦的であるが、一方で、財源確保や投資配分の妥当性については疑問が残る。
また「平均賃金100万円増」についても、賃金上昇の根拠が明示されていない。労働市場改革、企業収益構造、物価上昇とのバランスをどう取るのかが課題だ。実現のためには、賃上げ圧力を企業にどう働きかけるかが焦点となる。
若さと発信力が武器
小泉氏の政治的資産は、何よりも“若さ”と“発信力”だ。44歳という年齢は、自民党総裁候補の中では群を抜いて若い。環境大臣時代には「プラスチックごみ削減」や「脱炭素社会」などをキャッチーに訴え、賛否両論を巻き起こした。
ただ、その言葉がしばしば「小泉構文」として揶揄されることも多い。シンプルかつ印象的なフレーズはSNS時代において強力な武器となるが、同時に「中身がない」との批判にも晒されやすい。
彼の政治スタイルを理解する上では、『小泉進次郎の挑戦』といった著書も参考になる。自身の言葉をどのように社会へ届けようとしてきたか、その軌跡がうかがえる。
他候補との比較
現在の総裁選レースにおいて、小泉氏の最大のライバルは高市早苗前経済安全保障担当大臣(64)だ。高市氏は安全保障・外交での経験が豊富で、保守層からの支持が厚い。
一方で、石破茂元幹事長は“地方に強い”政治家として知られ、地方議員や党員票の取り込みに優位とされている。また、岸田文雄前首相が依然として影響力を持ち、党内の票の動きにも影響を与える。
こうした総裁選のダイナミズムについては、『日本を守る 強く豊かに』が参考になる。派閥の動きや世論調査との関係性が詳述されており、今回の小泉氏の挑戦を俯瞰的に理解する手がかりになる。
TikTok初投稿に批判殺到
小泉氏が開設したTikTokアカウント。その初投稿は「皆さんこんにちは。小泉進次郎です。総裁選の出馬表明会見を終えたところです。国民の皆さんとともに立て直す。これからどうぞよろしくお願いします」と挨拶するだけのシンプルな動画だった。
しかし、コメント欄には批判が殺到した。
《頼む。日本のために政治家引退してくれ》
《貴方は何もしなくていい小泉構文を作ってなさい》
《TikTokを始めたということは、TikTokを始めたということなんですね》
《ほんまにやめて》
といった辛辣な書き込みが目立ち、陣営には衝撃が走った。
想定外の反応に陣営困惑
小泉氏はX(旧Twitter)ではコメント欄を閉鎖しているが、TikTokでは自由にコメントできる設定のままだった。そのため批判的な意見が可視化される結果となった。
政治ジャーナリストは「TikTokは10代・20代を中心に利用率が高い。彼らの支持を得やすいと考えていた小泉氏にとって、批判集中は想定外だった」と指摘する。
『政治家に有利なSNS規制の分析』でも触れられている通り、SNSは支持拡大の場であると同時に、批判を可視化しやすいリスクもある。今回のケースはその典型例といえるだろう。
SNS戦略の成否
小泉氏のSNS戦略は、他の政治家と比べても大胆だ。Xでの発信を制限する一方、若年層が集うTikTokに挑戦したことは注目に値する。
海外でも、米国のオカシオ=コルテス議員や韓国の与野党議員らがTikTokを活用して支持拡大に成功している事例がある。しかし同時に、動画が炎上して逆効果になるケースも多い。
こうしたリスクとリターンをどう見極めるかは、現代政治家の必須スキルである。『ネット選挙が変える政治と社会』では、SNSが選挙戦に与える影響が詳細に解説されており、小泉氏の試みを理解する一助となる。
強い関心の裏返し
批判が相次いだとはいえ、小泉氏のTikTokアカウントはわずか2回の投稿で2.6万人のフォロワーを獲得した。この数字は、国民の関心の高さを示すものであり、単なる炎上では片付けられない意味を持つ。
父・小泉純一郎元首相が展開した「劇場型政治」のように、進次郎氏も自身の話題性を政治資産として活用できる可能性がある。現代政治においては、政策や発言だけでなく、パフォーマンスやメディア戦略が世論形成に与える影響も無視できない。
今後の展望
総裁選はこれから本格化する。小泉氏が批判を乗り越えて「若さ」「発信力」を強みにできるか、それとも“軽さ”という弱点が露呈するか、正念場となる。
世論は分かれているが、少なくとも注目度の高さは他候補を凌駕している。今後の動向次第では、日本政治の世代交代を象徴する存在となる可能性もあるだろう。

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