【村井知事】イスラム教徒向け土葬墓地の整備を白紙撤回 市町村長の同意得られず断念

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Politics

宮城県の村井嘉浩知事は2025年9月18日、県が検討していたイスラム教徒らのための土葬墓地整備について、検討自体を白紙撤回すると表明しました。
村井知事は県議会本会議で「市町村長の意見を踏まえると実現は極めて厳しい。熟慮の結果、土葬墓地の検討を取りやめる」と述べ、今後も同様の計画は進めない方針を明言しました。

2023年10月に検討表明してから約1年。知事は当初「批判があってもやらなければならない」と強い姿勢を見せていましたが、最終的に地域の合意形成が難しく、計画は断念されました。

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宮城県では墓地埋葬法に基づき、市は市長、町村は知事が墓地の設置許可権限を持っています。しかし、県は1987年までに町村への権限移譲を完了しており、整備には市町村長の許可が不可欠でした。

県が9月13日〜17日に行った電話調査では、市町村長から「住民の理解が得られない」「環境への不安が大きい」といった理由で受け入れを拒否する回答が相次ぎ、計画は事実上不可能に。
村井知事は「地域住民の合意形成がない中で整備はできない」と説明し、計画を撤回する判断に至りました。


外国人材と宗教的配慮

宮城県が土葬墓地整備を検討した背景には、イスラム教徒をはじめとする外国人居住者の増加があります。イスラム教では火葬が禁じられ、亡くなった人はできるだけ早く土葬することが宗教上の義務とされています。

しかし、日本では火葬率が99%を超えており、土葬可能な墓地は全国で約10か所しかありません。東北地方には一か所もなく、県外まで遺体を搬送する家族も少なくありません。

宮城県は外国人材受け入れを推進しており、将来的に土葬ニーズが増えることを見据え、2023年に調査・検討を始めました。


県民からは、以下のような懸念が多く寄せられました。

  • 地下水汚染や環境への影響
  • 土地価格や県産農産物への風評被害
  • 「日本では火葬が当たり前」とする文化的抵抗感

2023年12月〜2024年8月末までに寄せられた苦情や問い合わせは合計1,918件に上り、県としても無視できない規模となりました。


Q1:日本では土葬は違法なの?
→ いいえ、違法ではありません。ただし墓地埋葬法で墓地として許可された土地でしかできず、許可のハードルが高いため実際にはほとんど行われていません。

Q2:土葬は環境に悪影響があるの?
→ 厚生労働省によれば、適切な深さと管理があれば感染症リスクは低いとされています。ただし、地下水への影響を懸念する声は根強く、慎重な調査が必要です。

Q3:海外ではどうしているの?
→ 欧米では土葬が一般的な国も多く、イスラム教徒専用区画を備える墓地もあります。多文化共生の一環として、宗教別の墓地を整備する自治体も増えています。


村井知事は10月26日投開票の知事選で6選を目指しています。
今回の撤回は「選挙で争点になることを避けるためでは」との見方もあり、県議の一部からは「時期的に政治判断だ」との声が出ています。

一方で、知事は「選挙とは関係なく、地域の意見を尊重した結果」と説明しています。


宮城イスラム国際共同霊園をつくる会の共同代表ソヨド・アブドゥル・ファッタ氏は「必要性は変わらない。今後も交流を続け、理解を深めてほしい」とコメントしました。

専門家も「地方自治体だけでなく、国が主導して宗教的配慮を考えるべき時期に来ている」と指摘しており、今後は国レベルでの制度設計が求められそうです。


地域施設名特徴
神奈川県横浜市営メモリアルパーク一部で土葬可能、宗教対応あり
北海道札幌市営墓地事前許可制で土葬可能
愛知県豊田市営霊園ムスリム区画を整備

※東北地方には現時点で土葬可能な墓地は確認されていません。


今回の撤回は、地方自治体が単独で宗教的ニーズに応えることの難しさを浮き彫りにしました。
外国人労働者の受け入れが拡大する中、宗教的配慮を含めた多文化共生の仕組みづくりが必要です。

  • 環境影響調査や安全基準の整備
  • 住民への情報提供と理解促進
  • 国主導の広域霊園整備

こうした課題を解決しない限り、同様の問題は全国各地で再び起こる可能性があります。

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