米国で証券のトークン化を巡る議論が本格化しており、下院金融サービス委員会は公聴会を開催し、ブロックチェーンを活用した新たな市場構造について検討を進めています。議員たちは、トークン化の到来は避けられないとの認識を共有しつつも、規制やリスクへの対応について意見が分かれています。
公聴会の概要
公聴会では、共和党と民主党の議員が証券トークン化が現実の流れになっているとの見方で概ね一致しました。特に、下院議員のアンディ・バー氏は「証券のトークン化はすでに始まっており、規制の近代化が必要だ」と強調しました。
米証券取引委員会(SEC)も、トークン化資産は従来の証券と同様に証券法の適用対象であるとしながら、制度整備を進めています。今後は「イノベーション免除」と呼ばれる仕組みを通じて、企業が新たな技術を試験的に導入できる環境を整える方針です。
トークン化の利点
トークン化の最大の利点は、取引の効率化とアクセスの拡大にあります。ブロックチェーン上で証券を扱うことで、取引はより迅速かつ低コストになり、24時間取引やグローバルな投資参加も可能になるとされています。業界関係者は、仲介業者を減らすことでコスト削減につながる点を強調しており、従来の金融インフラの非効率を改善する手段として期待が高まっています。
規制とリスクへの懸念
一方で、特に民主党議員を中心に懸念も多く示されています。匿名ウォレットによる外国資本の流入や、本人確認(KYC)の不備、分散型金融(DeFi)の管理体制などが問題視されています。マキシン・ウォーターズ議員は、トークン化によって取引が「ゲーム化」される可能性を指摘し、投資行動の過度な短期化やリスク増大への警戒を示しました。
また、ブラッド・シャーマン議員は、イノベーション免除によって「二層構造の市場」が生まれ、従来の規制が適用されない領域が拡大することへの懸念を表明しています。ウォーターズ議員は、2008年の金融危機を引き合いに出し、新しい金融技術が必ずしも市場の安定につながるとは限らないと警告しました。
政治的要因と業界の反応
議論を複雑にしているのが、ドナルド・トランプ大統領と暗号資産(仮想通貨)業界との関係です。トランプ氏の家族がデジタル資産事業を通じて巨額の利益を得ているとされる中、規制当局が同市場のルールを策定することへの利益相反の懸念が浮上しています。ウォーターズ議員は、「規制を決める側が市場で利益を得ている場合、誰の利益が優先されるのかという疑問が生じる」と指摘しました。
伝統的金融業界も、トークン化の進展に対して慎重な姿勢を示しています。業界団体は、新規参入企業にも既存の証券市場と同様の規制を適用すべきだと主張しており、規制の公平性を重視しています。また、透明性のあるルール形成プロセスの必要性も強調されており、規制当局による一方的な免除措置ではなく、公開の議論を経た制度設計が求められています。
業界側からは、規制の不透明さが続けばイノベーションが海外に流出するとの懸念も示されています。ブロックチェーン関連技術の開発競争が激化する中、米国が主導権を維持できるかどうかは、規制のスピードと柔軟性にかかっています。
結論
米国における証券のトークン化は、効率化やアクセスの拡大といった利点を持ちながらも、規制やリスクへの懸念が根強く残っています。今後の議論や制度整備が、トークン化の進展にどのように影響を与えるかが注目されます。

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