英国の首都ロンドン中心部の住宅価格が急落している。政府が外国からの投資への課税を強化したことなどで投資家離れを起こし、約17年ぶりの価格下落を記録した。国民を悩ませる住宅価格の高騰を抑制する政策はイタリアやカナダなど各国で広がっている。
下落の実態
バッキンガム宮殿やビッグベンがあるシティ・オブ・ウェストミンスターでは12.7%の下落、金融街があるシティ・オブ・ロンドンでは11.2%の下落を記録した。ロンドン中心部全体では前年比で平均5.6%の下落となっており、高級エリアほど下落幅が大きい傾向にある。
ロンドンの高級住宅市場は2015年以降、価格が20%以上下落しており、富裕層向け住宅の販売件数は前年同月比で31.2%減少、平均価格は10%下落した。特に680万ドル(約10億円)以上の物件の取引は前年比で約55%も落ち込んでいる。
下落の背景
下落の最大の要因は、英国政府による相次ぐ課税強化である。外国人居住者が住宅を購入する場合の印紙税の上乗せ、2軒目以降の取得税率の引き上げ、さらに外国人富裕層への税優遇(ノンドム制度)の廃止が重なり、世界の投資マネーがロンドンを離れ始めた。
特に2025年4月の税制改正でノンドム制度が廃止されたことは決定的な影響を与えた。この制度は、永住しない外国人に適用される優遇措置であり、多くの富裕層を英国に引きつける要因となっていた。制度廃止により、これまで優遇を受けていた約7万5,000人の外国人富裕層が一斉に国外移住を始めたとされている。
移住サポートを行うヘンリー&パートナーズのレポートによれば、2025年に英国を離れる100万ドル以上の資産を持つ人は1万6,500人に達する見込みで、世界最多となっている。過去10年は中国が最多だったが、今年は英国が上回る見通しである。
各国で広がる住宅価格抑制策
住宅価格の高騰は先進各国共通の課題となっている。カナダは外国人による住宅購入を原則禁止、オーストラリアは外国人の中古住宅購入を2年間禁止、イタリアは10万戸の供給拡大を目指すなど、各国がそれぞれの方法で対策に乗り出している。しかし、どの国も思うように価格を抑えられているわけではなく、手探りの状態が続いている。
今後の見通し
ロンドンの住宅市場は、イラン戦争の勃発や経済的影響、高水準の課税、厳しい規制、英国経済の変動性などがさらなる逆風となっている。2026年4月の英国王立不動産鑑定士協会(RICS)の調査によれば、住宅価格の主要ネットバランスは34%へと悪化し、価格下落幅は2023年11月以来最大となった。
一方で、1年以上ぶりにロンドンの住宅価格が上昇するとの見方も出始めており、底入れの兆しも見え始めている。
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