日本郵便(JP)で運転手への点呼が適切に行われていなかった問題に対し、国土交通省は月内にもJPに対する自動車貨物運送の事業許可を取り消す方針を固めました。この処分は、全国の郵便局で使用されるトラックやワンボックス車など約2500台に影響を及ぼします。これは貨物自動車運送事業法に基づく最も重い行政処分であり、大手事業者に対する取り消しは極めて異例です。
点呼不備の経緯
JPでは、2023年1月に兵庫県内の郵便局で、乗務前後に行うべき法定の点呼を数年にわたり怠っていたことが発覚しました。全国3188の郵便局を対象にした内部調査の結果、75%にあたる2391局で何らかの不備が確認され、4月23日に総務省と国交省へ報告されました。これを受けて、国交省は4月25日からJPへの特別監査を開始し、各地方運輸局が立ち入り検査を行っています。
監査結果と処分の影響
立ち入り検査では、点呼の未実施や記録の改ざんが多数確認され、関東運輸局の管内では累積違反点数が許可の取り消し基準を超えました。国交省の関係者は「大手事業者とは思えない悪質さだ」と指摘しています。許可が取り消されると、JPは5年間自社のトラックやバンを運用できなくなり、宅配便「ゆうパック」や郵便事業への影響は避けられません。
今後の対応
JPは、子会社「日本郵便輸送」や協力会社への委託を増やすなどして対応する見込みですが、軽バンや原付きバイクについても調査を進めており、過去の点呼実施状況を確認しています。千田哲也社長は、原付きバイクについても調査結果を公表する意向を示しています。
この問題はJPの安全管理体制に対する信頼を揺るがすものであり、今後の信頼回復が求められています。国交省は、より大きな事故被害のリスクがあるトラックの監査を優先して行っており、軽自動車についても監査を急ぐ方針です。

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