米製薬大手ファイザーは、肥満症治療薬を開発する米新興企業メッツェラを最大100億ドル(約1兆5000億円)で買収することで合意したと、メッツェラが7日に発表した。この買収は、肥満症薬市場の成長を背景に、米欧での競争が激化する中での重要な動きとなる。
メッツェラによると、ファイザーが修正した買収案は、価格と取引成立の両方の観点から最良の選択肢であると判断された。ノボノルディスクもメッツェラに対して買収提案を行っており、米連邦取引委員会(FTC)からは独占禁止法に基づくリスクについての照会があったという。
ファイザーは9月にメッツェラを最大73億ドルで買収することで合意していたが、ノボノルディスクが10月30日に最大85億ドルの対抗提案を行い、さらに4日には買収金額を最大100億ドルに引き上げていた。ファイザーの修正案は、1株あたりの買収額でノボを5セント上回る内容となっている。
ファイザーは3日、ノボとメッツェラに関して独占禁止法違反として米東部デラウェア州の連邦地方裁判所に提訴していた。肥満症薬市場では、ノボが米国市場で先行しており、米イーライ・リリーと共にシェアを分け合っている。ファイザーは肥満症薬の開発に遅れをとっており、経口タイプの肥満症薬候補の開発を進めていたが、今年4月にその計画を断念した。メッツェラの買収は、技術を持つ新興企業を取り込む狙いがある。
肥満症薬は食欲を抑制する効果があり、肥満症や糖尿病の治療に使用される。米調査会社ギャラップの世論調査によると、2025年4〜9月にかけて米成人の12.4%が減量目的で肥満症薬を使用しているとされ、24年1〜3月調査の5.8%から2倍以上に増加している。
米ゴールドマン・サックスによると、世界の肥満症薬市場は2030年までに950億ドルに拡大する見込みであり、米国市場では2025年の肥満症薬の売り上げが228億ドルに達すると予測されている。6日にはトランプ米大統領が、米国内での肥満症薬の薬価引き下げに向けてノボとリリーと合意したと発表しており、公的医療保険の対象となることで、高額な肥満症薬が低所得者層にも広がる可能性がある。

![]() |


