住宅ローンの変動金利がここ1年で大幅に上昇し、返済額が増加する世帯が増えています。変動金利は従来、低金利が長く続いたことで多くの住宅購入者に選ばれてきましたが、半年前よりも上昇し、1年前と比較すると倍近くの金利になっているケースもあります。この状況を受け、固定金利への借り換えを検討する相談が増えている一方で、建物の担保価値などの条件によって借り換えができないケースも報告されています。
変動金利の上昇状況
変動金利で住宅ローンを組む人に届く通知では、半年前の0.85%から1.1%に上昇した例があり、1年前の0.6%と比べると倍近い金利上昇となっています。住宅ローンの見直しや借り換えの相談を受ける会社では、相談件数が8月の37件から先月は59件に増加しました。
埼玉県川口市で3LDKの戸建てを購入した30代の夫婦の場合、夫の年収は750万円、妻は300万円で、夫が4910万円を返済期間40年、変動金利で借り入れました。当初の金利は0.57%でしたが、今年6月には0.6%に上昇。わずか0.03%の上昇でも、月々の返済はおよそ6000円増加する計算となります。返済は70代まで続くため、家計に長期的な影響を与えます。
生活への影響
滋賀県に3LDKの戸建てを建てたBさん(30代)は、年収420万円の医療関係従事者で、妻とのペアローンで3900万円を変動金利で借り入れ、返済期間は35年です。3年前は0.525%だった金利が、半年前は0.675%、現在は0.925%に上昇しました。月々の返済額は9万3000円、ボーナス月には4万3000円を追加で支払っています。Bさんは家計のやりくりとして、買い物の際にお酒などの出費を控えるなど、日常生活にも影響が出ています。
固定金利への借り換えとその制約
変動金利上昇を受けて、固定金利への借り換えを検討する世帯も増えています。しかし、全てのケースで借り換えが可能なわけではありません。世帯年収630万円のCさん家族は、1900万円で購入した中古住宅を1700万円かけてフルリノベーションし、3600万円を変動金利1.25%で借り入れていました。今年6月、固定金利1.68%への変更を銀行に打診したところ、銀行からは「修繕が難しい建築物であるため借り換えは難しい」との回答を受けました。建物の状態や法的条件により、借り換えができないケースがあることは重要な注意点です。
金利差の縮小と影響
住宅金融支援機構によると、従来は変動金利が0.50%前後、固定金利は1.03%前後で差が大きかったのですが、現在は固定0.89%、変動0.64%と差が縮小しています。このため、変動金利で借り入れた場合でも、固定金利に切り替えるメリットが相対的に高まっています。また、みずほ銀行は今月から変動金利を0.25%引き上げるなど、今後も金利上昇が続く可能性が指摘されています。
相談の傾向と専門家の対応
「おうちの買い方相談室」の三浦康司代表によると、住宅ローンの相談は30代・40代が中心で、子どもにかかるお金の不安や、金利上昇が続いた場合の家計への影響を心配する声が多いとのことです。専門家は、ライフプランニングの観点から資金計画を立て、毎年もしくは2年に1度は見直しを行い、返済計画に伴走することが重要としています。
まとめ
- 住宅ローンの変動金利はここ1年で倍近くに上昇
- 返済額の増加で家計に影響を与える世帯が増加
- 固定金利への借り換え需要は増えているが、担保価値や物件状態で借り換えできないケースもある
- 固定金利と変動金利の差は縮小しており、返済計画の見直しが重要
住宅ローン利用者は、金利の動向に注意を払い、ライフプランと家計を合わせた資金計画の見直しを早めに検討することが求められます。

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