2025年4月7日、国際政治学者の六辻彰二氏は、米トランプ政権による関税引き上げの対象からロシアが除外された理由について考察しています。トランプ政権は185カ国に対して関税を引き上げる措置を講じましたが、ロシアはその中に含まれていませんでした。この決定にはいくつかの背景があると考えられます。
トランプ政権の説明と実態
トランプ政権は、ロシアを関税引き上げの対象から外した理由として「制裁が続いており、取引がほとんどない」と説明しています。しかし、実際には2024年のアメリカの対ロ輸入額は約32億ドルに達しており、ウクライナ侵攻後も肥料や木材、ウラン精鉱などの輸入は続いています。このため、トランプ政権の説明は事実に反するとの指摘があります。
ロシアとの関係改善の優先
トランプ政権がロシアを例外扱いした背景には、ウクライナ停戦協議を巡る関係改善を優先させた結果があると考えられます。ロシアのキリル・ドミトリエフ特使は、トランプ政権の関税発表後に対米関係の改善を示唆する発言をしており、これがトランプ政権にとって重要なメッセージであった可能性があります。
他国との比較
トランプ政権は、イランやリビアなど他の制裁対象国に対しては関税を引き上げていますが、ロシアはその対象から外れています。イランは1979年以来「テロ支援国家」として指定され、昨年の対イラン輸入額は629万ドル程度でしたが、それでも関税は10%引き上げられました。リビアも同様に多くの制裁を受けており、昨年の対リビア輸入額は約15億ドルでしたが、関税は31%引き上げられています。
トランプ政権のジレンマ
トランプ政権は、ウクライナに対する支援を強化する一方で、ロシアとの交渉を進めざるを得ない状況にあります。しかし、ロシアは停戦案を拒否し、ウクライナに対する攻勢を強めています。このような中で、トランプはロシアに対して圧力を加える手段が限られており、交渉を進めることでロシアの影響力を相対的に高める結果を招く可能性があります。
ロシアの外交的優位性
トランプ政権による関税引き上げからロシアが除外されたことは、ロシアにとって外交的な意味を持つと考えられます。関税引き上げを免除されたことで、ロシアは停戦協議に応じる必要が薄れ、戦闘を続けることで自国の影響力を維持することが可能になります。トランプがロシアに融和的な態度をとり続けることで、ロシアの立場は相対的に強化されるかもしれません。
まとめ
トランプ政権がロシアを関税引き上げの対象から除外した理由は、ウクライナ停戦協議を巡る関係改善を優先させた結果であると考えられます。ロシアとの関係改善を図る一方で、トランプ政権は他の制裁対象国に対しては厳しい姿勢を示しており、このジレンマが今後の国際関係にどのような影響を与えるか注目されます。ロシアはこの状況を利用して外交的な優位性を高める可能性があり、トランプ政権の対応が今後の展開に大きな影響を与えることになるでしょう。

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