イーロン・マスク氏は5月28日、米国の政府効率化省(DOGE)からの退任を発表しました。その後、スペースXによる人類の火星移住や多惑星居住に関する壮大な計画をプレゼンテーションしました。
マスク氏はDOGE退任に際し、X(旧Twitter)で次のようにコメントしました。「私の政府特別職員としての任期が終わりに近づいている。無駄な支出を削減する機会を与えてくれたドナルド・トランプ大統領に感謝申し上げる。」政府効率化省のミッションは、政府全体で日常業務として定着するにつれて強化されていくと述べています。
マスク氏は、政府特別職員としての勤務日数が年間130日に制限されており、5月30日までにこの上限に達すると予想されていたため、退任は事前に予想されていました。DOGEは公式サイトで、これまでに削減できた無駄な支出の額を公開しており、31日時点で1,750億ドル(約25兆円)の削減を達成したと報告しています。これは納税者一人あたり1,086ドル(約16万円)に相当します。
一方で、マスク氏は5月27日にトランプ政権の2026年会計年度の予算案について失望を表明しており、予算案が米国政府の財政赤字を拡大させると批判しました。特に、減税による赤字拡大が最大の問題だと指摘しています。また、マスク氏がトランプ大統領を支持し政権で役目を果たすことは、テスラ社のブランドイメージにも影響を与えていたとされています。
「生命を多惑星化」する構想
マスク氏は5月29日、スペースXがテキサス州に設立した新設都市スターベースでプレゼンテーションを行いました。火星到達計画では、スペースXの宇宙船スターシップと軌道上燃料補給が重要な役割を果たすとされています。無人ミッションは2026年に開始され、2029年までに火星に最初の人類居住地を建設することを目指しています。
マスク氏によると、自立型火星コロニーを建設するには100万トンの貨物が必要であり、その運搬には数千回のスターシップ打ち上げが必要です。彼は、スターシップの打ち上げの初期段階は、生命を多惑星化するために何が必要かを学ぶプロセスであると述べました。「スターシップを、数十万人、場合によっては数百万人を火星に連れて行けるレベルまで改良する。そして、火星に行きたい人は誰でも行けるようにしたい。」と語っています。
さらに、火星を自立させ、地球からの供給船が来なくなっても自力で成長できるようにすることが人類の運命の分岐点であると強調しました。火星が自立できれば、文明のレジリエンスが確保され、地球で何か問題が起きた際には火星が地球を救う可能性もあると述べています。
また、火星でのインターネット通信は、衛星通信サービス「スターリンク」を利用して実現可能であるとし、高帯域通信の難しさにも言及しました。火星では太陽エネルギーが大量に必要であり、最初はガラスドームの中で特別なスーツを着て生活し、最終的には火星を地球のようにテラフォーミングする構想を披露しました。
マスク氏は、火星を超えて月や小惑星帯、木星の衛星、そして最終的には他の星系へ行くことについても言及しています。彼のビジョンは、単なる火星移住にとどまらず、人類の未来を多惑星に広げる壮大な計画であることが明らかです。

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