2025年度の最低賃金(時給)について、中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は4日、全国加重平均で63円(6.0%)引き上げて1118円とする目安を答申しました。今春闘の高水準の賃上げや物価高などを背景に、昨年度の50円(5.0%)を上回る過去最大の引き上げとなりました。
地域別最低賃金の目安
最低賃金は、企業が労働者に支払う賃金の下限額であり、審議会は労使と有識者の代表で構成されています。賃金の動向や労働者の生計費、企業の支払い能力を考慮し、地域の経済状況に応じて都道府県をA~Cの3ランクに分けて目安を示しています。
今年度は以下のように設定されました:
- Aランク(東京、大阪など6都府県):63円
- Bランク(北海道、福岡など28道府県):63円
- Cランク(岩手、沖縄など13県):64円
この目安を踏まえて各都道府県の審議会が上げ幅を決定し、10月ごろから発効する予定です。目安通りに改定されれば、全都道府県で1000円を超えることになります。最も高い東京都は1163円から1226円、最も低い秋田県は951円から1015円となります。近年は地方の審議会の決定額が目安を大幅に上回るケースもあり、今後の審議が注目されます。
労働者と使用者の意見
7月中旬から始まった今年度の中央審議会の小委員会では、労働者側が長期化する物価高を踏まえ、「最賃に近い時給で働く労働者の生活は昨年以上に苦しくなっている」と主張し、昨年を上回る大幅引き上げを求めました。一方、使用者側は引き上げの必要性を認めつつも、中小企業で価格転嫁が十分に進んでいないことから「過度の引き上げは経営を圧迫しかねない」と慎重な姿勢を示していました。
物価上昇と生計費の影響
厚労省が小委員会に提出した資料によると、総務省の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は昨年10月~今年6月の平均値で前年同期比3.9%増、食料品に限ると同6.4%増となっています。小委員会は最終的に、物価高で家計の負担が増えているとして生計費を重視し、過去最大の引き上げ額で決着しました。
政府の目標と今後の展望
最低賃金を巡って、政府は「20年代に全国平均1500円」という目標を掲げています。達成には今年度を含め単純計算で毎年度7.3%の引き上げが必要ですが、今年度はこれを下回る結果となりました。今後の動向が注目されます。
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