米オープンAI(OpenAI)は、サイバーセキュリティ性能を高めた新型AIモデル「GPT-5.5-サイバー」を日本に提供することを検討している。サイバーセキュリティの専門家で、オープンAI取締役のポール・ナカソネ氏(元NSA長官・米サイバーコマンド司令官)が21日、日本経済新聞などの取材に応じ、来日中に日本の政策関係者と会談し、自社のサイバーセキュリティモデルへのアクセス提供について協議する方針を示した。
背景:同盟国間の連携強化
この動きは、中国のAI開発が加速するなか、同盟国間の連携を深めて対策を急ぐ狙いがある。オープンAIのジェイソン・クォン最高戦略責任者(CSO)も先に、東京都内で朝日新聞の取材に応じ、サイバーセキュリティーの性能を高めた最新AIモデルを近く一部の日本企業に提供する方針を明らかにしている。
GPT-5.5-サイバーの性能
GPT-5.5-サイバーは、2026年4月23日に発表された最新モデル「GPT-5.5」のサイバー防御に特化したバリエーションである。同モデルは、アンソロピック(Anthropic)が先に発表した「クロード・ミュトス(Claude Mythos Preview)」に匹敵するサイバー攻撃・防御能力を持つとされる。
英国のAI安全研究所(AISI)による評価では、GPT-5.5は高度なサイバー攻撃タスクにおいて平均成功率71.4%を達成し、ミュトス(68.6%)を上回る結果を示した。また、企業ネットワークへの32段階のシミュレーション攻撃を10回中2回完了し、ミュトスに次いで2番目にこのテストをクリアしたモデルとなった。
提供スキーム
オープンAIは、サイバー防御者向けに「Trusted Access for Cyber(TAC)」プログラムを通じてGPT-5.5-サイバーを提供している。このプログラムでは:
- 審査を受けたサイバー防御者が、一般公開モデルよりもガードレール(安全制限)の緩いバージョンにアクセス可能
- バグの検出、マルウェアの分析、攻撃のリバースエンジニアリングなどに活用できる
- ただし、資格情報の窃取やマルウェア作成などのタスクは引き続きブロックされる
EUとの協議状況
オープンAIは欧州連合(EU)とも同様の協議を進めている。欧州委員会のトーマス・レニエ報道官は5月11日、オープンAIについて「透明性があり、新モデルへのアクセス提供に前向きな姿勢を示している」と評価した。一方、アンソロピックの「ミュトス」については、EU向けの審査用プレビューが未提供であることが報じられている。
業界の動向と課題
オープンAIとアンソロピックは、サイバー能力を持つAIモデルの展開において異なるアプローチを取っている:
- アンソロピック:より制限的な姿勢。約40の組織にミュトスへのアクセスを許可。新たな「Project Glasswing」では、参加企業がモデルのテスト情報を共有
- オープンAI:より開かれたアプローチ。厳格なガードレール付きのバージョンと、申請企業向けの制限緩和版の2段階で提供
ナカソネ氏の来日により、日本政府・企業へのGPT-5.5-サイバー提供の具体的な枠組みが協議される見通しであり、同盟国間でのサイバー防御協力の強化が期待される。
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