北海道苫小牧市では、データセンター(DC)の立地が相次ぎ、関連産業の集積が始まっています。エネルギーの安定供給を見据えた拠点の整備に加え、風力や太陽光による再生可能エネルギーの活用に向けて、蓄電池分野の企業進出も決定しました。
北海道は、DC立地に必要な電力供給を満たす潜在力が高い一方で、周辺に情報処理の拠点が少なく、計算資源やデータを地域内で活用できるかが課題となっています。経済産業省は、再生可能エネルギーなど脱炭素電源を利用した新たな産業集積地の創出に取り組む「GX(グリーントランスフォーメーション)戦略地域」の有望地域を公表しました。この認定を受けることで、GX経済移行債を財源として活用でき、自治体も企業の誘致を進めやすくなります。
苫小牧市では、ソフトバンクとその子会社IDCフロンティアが大規模な人工知能(AI)向けの「北海道苫小牧AIデータセンター」を建設中で、2026年度に開業予定です。このデータセンターは、将来的にソフトバンクのデータインフラの中核を担うことが期待されています。
4月上旬には、苫小牧市のDC建設現場で68万平方メートルの広大な敷地に巨大なクレーン車やトラックが頻繁に出入りしており、隣接する敷地には太陽光発電のパネルも設置されています。ソフトバンク以外にも、サーバー設備のリースを手掛けるシンガポール企業が出資した別のDCも建設予定で、2027年春を目指して受電容量5万キロワットのコンテナ型DCが整備される予定です。
生成AIの活用によりデータ処理の需要が増加していることから、情報通信会社などはDCの建設投資を加速させています。調査会社IDCジャパンの予測によれば、日本のDC投資は2028年に1兆円を超える規模になると見込まれています。
多くのDCプロジェクトは米IT大手によって推進されており、マイクロソフトは日本でDCなどに100億ドル(約1兆6000億円)を投資すると発表しています。北海道は、DCに必要なインフラが整っており、洋上風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーの潜在的な供給力が高く、DCの拡大と脱炭素化を並行して進めやすい環境にあります。冷涼な気候も、DCの運用において有利です。
北海道電力は1月に苫小牧を基点としたエネルギー供給構想を発表し、液化天然ガス(LNG)の供給やLNG火力発電所の建設を表明しています。また、隣接する千歳市では最先端半導体の量産を目指すラピダスによる産業集積効果も期待されており、再生可能エネルギーと合わせて電力の安定供給につなげる計画です。
しかし、再生可能エネルギーの弱点である天候による供給力の変動を抑えるため、蓄電池事業者も進出を始めています。パワーエックスは3月下旬に苫小牧市に蓄電池工場を建設することを発表しました。
現在、DCの8割以上が首都圏や関西圏など情報処理の需要が大きな地域に立地しています。政府は電源と通信インフラを一体整備する「ワット・ビット連携」を掲げ、DCを脱炭素関連の産業が進む地方に分散させる構想を描いています。北海道内では石狩市や美唄市などもDC誘致を進めており、競争が激化する中で苫小牧市は有力な候補地と見なされています。
ただし、DCの誘致に伴う経済波及効果には限界があるとの見方も根強いです。同市の経済界からは「地元の下請け業者は現場の工事業務を受注できているが、稼働後は大きな雇用を生みにくいだろう」との声が上がっています。三菱総合研究所の西角直樹フェローは「DCの計算資源を活用したいと思うベンチャー企業の誘致を進め、それを長い目で育てていくなど、DCを土台として戦略的に活用していくことが必要だ」と指摘しています。
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