【NoBorder#14】給与天引きが「失われた30年」の黒幕か?社会保障費と日本経済停滞の深い関係

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日本は1990年代のバブル崩壊以降、「失われた30年」と呼ばれる長期の経済停滞を経験してきました。株価や土地価格の暴落、企業のリストラ、賃金の伸び悩み…。その間に、中国や韓国など近隣諸国が急成長し、日本は相対的に存在感を失っていきました。

この停滞の原因についてはさまざまな議論があります。金融政策の失敗、少子高齢化、規制の壁など。しかし、近年注目を集めているのが、私たちが毎月受け取る給料から自動的に差し引かれている社会保障費(給与天引き)です。

「手取りが増えない」「働いても豊かさを実感できない」という現役世代の不満の裏に、社会保障制度の構造的な問題が潜んでいるのではないでしょうか。


まず知っておきたいのは、給与天引きの実態です。

具体例:月収30万円の場合

  • 月収30万円の正社員 → 社会保険料として 約4万4,000円 が天引き(15%相当)。
  • 会社も同額を負担 → 労使合わせて 約8万8,000円 が国へ。
  • 実際には「総額30万円の労働」に対して、労働者は25万6,000円しか受け取れない構造です。

年収ベースで見ると

年収480万円の労働者の場合、労使合わせて 120万円近く が社会保障費に消えます。これは自動的に差し引かれるため、多くの人が「負担の重さ」を実感しづらいのが特徴です。

企業にとっても大きな負担です。人件費の3割が社会保障費に消えている状況は、雇用の拡大や賃上げの足かせとなり、日本全体の成長を阻害する要因となっています。


社会保障費が増え続ける最大の理由は、もちろん少子高齢化です。

  • 日本の高齢化率はすでに 29%超(約3人に1人が65歳以上)。
  • 医療・介護・年金にかかる費用は年々増加し、毎年15兆円規模の財源不足が発生。
  • この穴埋めのために消費税増税や社会保険料引き上げが繰り返されてきました。

その結果、現役世代の可処分所得が減少 → 消費が落ち込む → 景気が回復しない → 企業収益も上がらず賃金も伸びない、という悪循環が30年以上も続いているのです。


経済学者の分析

京都大学の藤井教授は「失われた30年の真の原因は成長戦略の欠如にある」と指摘しています。社会保障費の増大そのものよりも、経済成長による税収拡大を軽視してきた政策こそが問題だという立場です。

単に増税や負担増で財源を補おうとすると、経済規模が縮小し、さらに負担が重くなるという“縮小スパイラル”に陥ります。

政治評論家の視点

古屋氏は「安倍政権が掲げた“第三の矢=成長戦略”は、既得権益に配慮するあまり骨抜きとなった」と批判。規制改革や産業構造の転換が進まず、日本は再び成長の波に乗り遅れました。

金融専門家の視点

大西氏は「国家財源の本質は“人の労働と時間”」とし、1985年のプラザ合意以降、円高を背景に企業がコストカット路線に走ったことが賃金低下と停滞の根本原因だと指摘します。


給与天引きは単に「手取りが減る」だけではありません。

  • 消費活動の縮小:手取りが減れば、当然ながら消費が抑制されます。
  • 投資意欲の減退:企業にとっても人件費負担が重く、新規採用や研究開発投資に回せない。
  • 格差の固定化:富裕層よりも現役労働者・若年層が直撃を受けるため、格差が拡大。
  • 少子化の加速:将来不安や生活の窮屈さが、結婚や出産をためらわせる。

こうした影響が積み重なり、結果として日本は30年以上も成長できない国となってしまったのです。


専門家からはさまざまな解決策が挙げられています。

  1. 消費税減税・廃止
    →「15%割引セール」と同じ効果で消費を刺激、結果的に税収増につながる可能性。
  2. 医療制度の効率化
    → 電子カルテの普及や保険適用範囲の見直しで、数兆円規模の削減が可能。
  3. 成長産業の育成
    → 製薬・IT・エネルギーなど新産業に投資し、既得権益に依存しない構造へ転換。
  4. 大胆な子育て支援
    → 出産一時金の増額や教育費無償化など、人口減少を食い止める仕組み作り。

これらは単なる「負担軽減」ではなく、日本経済を再び成長軌道に乗せるための根本改革です。


給与天引きされる社会保障費は、確かに現役世代を苦しめています。しかしそれは単なる原因ではなく、日本経済が成長できず、高齢化に適応できなかった結果でもあります。

真に必要なのは、負担増ではなく経済成長。社会保障制度を維持しつつ、現役世代が安心して働き、豊かさを実感できる国へと舵を切れるかどうか。これこそが「失われた30年」から脱却するための最大の課題なのです。

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