海底ケーブルの安全保障上の重要性

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海底ケーブルの安全保障上の重要性

世界の通信インフラの基盤となっている海底ケーブルは、インターネットや金融取引、国際的な企業間ネットワークを支える不可欠な存在です。実際、国際データ通信の90%以上は海底ケーブルを通じて送受信されており、現代社会において海底ケーブルが遮断されれば、経済活動や行政サービスに甚大な影響が出ます。さらに、通信内容が傍受されたり、外部の国や企業に依存した部品が使われたりすれば、サイバー攻撃や情報流出のリスクが高まります。このため、海底ケーブルの安全性は単なるインフラ問題ではなく、国家の安全保障や経済戦略そのものと直結しているのです。

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政府の調査方針

日本政府は2025年度中に、海底ケーブルの本体や中継器、制御装置といった通信システムのあらゆる部分について、部品の調達先を洗い出す調査を進める予定です。特に注目されるのは、国内メーカーが中国をはじめとしたリスクの高い国からどの程度部品を仕入れているのかという点です。調査結果は、今後の経済安保政策の基盤となり、調達先の多様化や国産化を進めるかどうかの重要な判断材料になります。こうした調査は単なる形式的な確認ではなく、将来的な通信遮断リスクや情報流出を未然に防ぐための第一歩といえます。

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米国の動きと日本の対応

米国はすでに、中国系企業が関与する海底ケーブル事業からの排除を進めており、国際的にも経済安全保障をめぐる動きは加速しています。たとえば米国では、通信の要所に中国製部品を使用することは国家安全保障上のリスクとみなし、規制や制裁の対象にしてきました。日本も同盟国としてこれに歩調を合わせる形で、調達ルートの透明化や安全保障上のリスク低減を目指しています。今後は米国や欧州の企業と連携して、新しいケーブル敷設プロジェクトを共同で進める可能性も高まっており、日本単独ではなく国際的な枠組みの中で安全を確保する流れが強まっています。

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財政支援と専用船の確保

海底ケーブルの敷設や保守には、特殊な設備を備えた専用船が必要です。しかし、こうした船舶の運用は莫大なコストがかかり、民間企業が単独で維持するのは難しいのが現状です。そこで政府は、国内事業者が専用船を自社で確保できるように財政支援を行う方針を打ち出しています。これにより、海外企業への依存を減らし、災害や緊急事態が発生した際にも迅速に国内で修復作業を行える体制を整えることが狙いです。さらに、こうした支援は造船業や関連産業の活性化にもつながり、経済面での波及効果も期待されています。


今後の課題と展望

政府の調査と支援によって、経済安全保障のリスク低減が進む一方で、課題は少なくありません。第一に、調達先の多様化を進めるためには国内メーカーの技術力強化とサプライチェーンの拡充が不可欠です。第二に、サイバー攻撃の高度化に対応するため、AIによる異常検知や量子暗号技術の導入といった新技術を組み合わせた防御策が必要になります。さらに、国際的な海底ケーブルの整備競争はすでに激化しており、日本が他国と協力しながらも独自の技術基盤を築けるかどうかが今後の大きな焦点となります。経済安全保障とデジタル社会の持続的発展を両立させるため、日本は中長期的な戦略を描くことが求められています。

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