2025年4月10日、金融庁は「暗号資産に関連する制度のあり方等の検証」と題したディスカッション・ペーパーを公表し、5月10日までの期限で広く一般からの意見を募集しています。この取り組みは、2024年7月から進められてきた暗号資産取引の実態に基づく制度検証の一環です。
目的と背景
金融庁は、利用者保護とイノベーション促進のバランスを重視し、集めた意見を今後の規制見直しの検討材料とする方針です。今回のディスカッション・ペーパーでは、暗号資産に関する規制の見直しが必要な理由やその方向性が示されています。
主な論点
ペーパーでは、以下のような規制見直しの対象範囲が挙げられています:
- 情報開示・提供規制
- 業規制(トラベルルール、ステーキング実務)
- 市場開設規制
- インサイダー取引への対応
特に注目すべきは、暗号資産を金融商品取引法(金商法)で規律する方向性が示唆されている点です。金融庁は、情報開示や投資詐欺、価格形成・取引の公正性などの課題が金商法の対象として適切であると考えています。
暗号資産の2類型化
ディスカッション・ペーパーの中核的な提案は、暗号資産を以下の2つに類型化することです:
- 資金調達・事業活動型暗号資産(類型①)
資金調達の手段として発行され、調達資金がプロジェクト等に利用される暗号資産。一部のユーティリティ・トークンが該当します。 - 非資金調達・非事業活動型暗号資産(類型②)
類型①に該当しない暗号資産。ビットコインやイーサリアムなどの主要暗号資産が該当します。
規制アプローチの比較
金融庁は、これらの2類型に対して異なる規制アプローチを適用する方針を示しています。以下は、各類型に対する規制アプローチの比較です:
規制分野 | 類型①(資金調達・事業活動型) | 類型②(非資金調達・非事業活動型) |
---|---|---|
情報開示 | 発行者に直接開示義務を課すことが考えられる | 特定の発行者を観念できないため、交換業者に説明義務を課すことが考えられる |
開示内容 | 資金使途、プロジェクト内容、リスク等 | 価格変動に重要な影響を与える情報 |
規制の適用時期 | 多数の一般投資家への勧誘時 | 交換業者による取り扱い時 |
規制の考え方 | セキュリティトークン規制とのバランスを考慮する必要がある | 交換業者を通じた対応が中心となる可能性がある |
金融庁は、類型①の暗号資産については、発行者と利用者との間の情報の非対称性を解消する必要性が高いとし、類型②については特定の発行者が存在しないため、情報開示・提供義務を課すことが難しいとしています。
今後の展望
このような区分けアプローチにより、暗号資産の性質に応じた規制枠組みの構築が検討されています。金融庁は、利用者保護とイノベーション促進のバランスを図ることを強調しており、今後は諸外国の規制動向も参考にしながら、寄せられた意見を基に検討を深める見通しです。
なお、今回のディスカッション・ペーパーは暗号資産の「規制の法的枠組み」にフォーカスしており、情報開示規制や業規制、市場開設規制、インサイダー取引対応などの金融規制の側面が主に議論されていますが、税制については触れられていません。

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