長期金利が急上昇し、日本国債市場に波紋が広がっている。
ゴールドマン・サックスは、高市早苗氏の財政重視姿勢が「国債増発リスク」を高め、米英市場にも影響を与えかねないと分析。
金利、為替、財政の三要素が同時に揺らぐ中、日本経済は新たな局面を迎えている。
目次
日本国債ショックとは?今なにが起きているのか
2025年10月現在、日本国債市場で異変が起きている。長期金利は1.4%台へ上昇し、国債価格は下落。円相場は1ドル=164円台に達し、同時に進行する「円安+金利上昇」が投資家の不安を増幅させている。
特に注目されるのが、日銀が保有する巨額の国債である。金融緩和による大量購入が続いた結果、現在では国債の約半数を日銀が保有。市場の流動性が低下し、少しの売り圧力でも金利が大きく動く「脆弱な市場構造」になっている。
ゴールドマン・サックス「日本の財政は限界に近い」
ゴールドマン・サックスは9月末のレポートで、「日本の債務残高はGDP比260%を超え、先進国で突出している」と警鐘を鳴らした。
同社は、日銀が今後緩和を縮小すれば長期金利が2%に達し、「日本国債市場は機能不全に陥るリスクが高い」と警告している。
さらに「円の信認低下」が進めば、海外投資家による“日本売り”が加速する可能性もある。これがいわゆる**「日本国債ショック」**のシナリオである。
高市早苗氏の発言が波紋「財政規律を無視するな」
政界でも緊張が高まっている。自民党の高市早苗氏は「財政規律を無視した政策運営は許されない」と発言し、財政健全化を強調した。
この発言は、市場では「増税や歳出削減を視野に入れた発言」と受け止められ、一時的に円が買い戻される場面もあった。
一方で、実質賃金が伸び悩み、個人消費が低迷する中での引き締め策は景気悪化を招くリスクがある。高市氏の発言は、財政再建と経済成長のバランスという古くて新しい課題を浮き彫りにした。
海外投資家が警戒する「日本売り」リスク
海外の大手ファンドの動きも変化している。ブルームバーグによると、欧米ヘッジファンドが日本国債先物を売り越す動きを強めているという。
背景にあるのは、日本の財政への根強い懸念だ。GDP比260%という債務規模は、アメリカ(約120%)やドイツ(約60%)の倍以上。海外から見れば、日本の「財政余力」は限界に近い。
もし金利上昇が加速すれば、国債価格下落→日銀の含み損拡大→円安進行という“負の連鎖”が現実化しかねない。
日銀の出口戦略 植田総裁の苦悩
植田総裁率いる日本銀行は、金融政策の“出口”を模索している。しかし、利上げには政府の財政負担増という副作用がつきまとう。
金利を上げれば国債費が急増し、財政赤字が拡大。逆に緩和を続ければ円安とインフレが進む。
日銀は9月の会見で「急激な金利変動は望ましくない」との姿勢を示したが、市場は「いずれ金利上昇を容認せざるを得ない」と見ている。
このジレンマの中で、日銀の政策判断が日本経済の命運を左右する。
政府の対応 防衛費・少子化対策の重圧
政府もまた、財政再建の現実と向き合う必要がある。
防衛力強化や少子化対策、エネルギー転換など、歳出拡大圧力は強い。
歳出削減や増税だけでは限界があり、財政健全化の道筋を描くには、**「成長と分配の両立」**が不可欠だ。
市場の信頼を取り戻すためには、単なる緊縮ではなく、長期的な財政戦略と構造改革が求められている。
まとめ
今回の「日本国債ショック」懸念は、一過性の金利上昇ではなく、日本の構造的課題を象徴している。
ゴールドマン・サックスの警告も、高市氏の発言も、共通して「信認の危機」を指摘している。
日銀・政府・市場がバラバラに動けば、危機は現実となるだろう。
いま日本に求められているのは、明確な財政ビジョンと政策の一貫性である。
その道を誤れば、“100年に一度の国債ショック”は現実となりかねない。

![]() |