米ブローカレッジ大手ロビンフッドは7月2日、イーサリアムのレイヤー2ネットワーク「ロビンフッド・チェーン(Robinhood Chain)」のパブリックメインネットを稼働させたと発表しました。
技術基盤と設計思想
同チェーンは、Arbitrumの技術スタック「Arbitrum Orbit」を基盤として構築されたイーサリアムのレイヤー2ブロックチェーンです。ネイティブガストークンとしてETHを利用し、チェーンIDは4663に設定されています。
ロビンフッドは同チェーンについて、金融サービスやトークン化された現実資産(RWA)向けに設計されたパーミッションレスかつAIネイティブなブロックチェーンだと説明しています。AIエージェントによる取引にも対応する設計となっており、伝統的金融(TradFi)と分散型金融(DeFi)の橋渡しを目的としています。
エコシステムとパートナーシップ
ネットワークは初日から充実したパートナー群と共に稼働を開始しました。
- Uniswap:主要な公開流動性プロトコルとして専用の自動マーケットメイカー(AMM)を提供
- BitGo:ローンチ初日から統合され、顧客はウォレット作成や鍵管理が可能に
- Chainlink:公式データおよびクロスチェーンオラクルとして採用。検証可能なデータのためにCCIP(クロスチェーン相互運用プロトコル)とデータストリームを提供
- Alchemy:インフラ事業者として統合
- Blockscout:ブロックエクスプローラーを提供
ストックトークン(トークン化株式)の提供
今回のローンチの中核となるのが「ストックトークン(Stock Tokens)」の導入です。対象となる120以上の国・地域の利用者は、ロビンフッドウォレット(Robinhood Wallet)から同トークンを利用できます。
主な特徴は以下の通りです:
- 24時間365日取引可能:従来の取引所の営業時間への依存をなくし、週末や祝日の取引が可能
- DeFi担保として活用可能:レンディングプールへの預け入れや、分散型金融における取引担保として利用可能
- 対応銘柄:エヌビディア(NVDA)、アップル(AAPL)、グーグル(GOOG)などの主要企業の株式をトークン化
- 取引手段:Uniswap、1inch、Lighter、Rialto、Arcusなどの分散型取引所を通じてスポット取引が可能
なお、ストックトークンはロビンフッド・アセット(ジャージー)が発行するトークン化債務証券であり、原資産となる株式への経済的エクスポージャーを提供する一方、株式そのものに対する法的権利や受益権は付与しないとされています。米国および米国人のほか、カナダ、英国、スイス、UAE、制裁対象法域などでは提供が制限されます。
分散型レンディング「Robinhood Earn」
ロビンフッドは、米国の対象利用者向けに分散型レンディングサービス「ロビンフッド・アーン(Robinhood Earn)」の提供を段階的に開始します。同サービスでは、セルフカストディウォレットを通じてドル建てステーブルコイン「USDG」を貸し出せます。レンディング基盤にはMorphoが採用され、推定年利は7%ですが、利率は固定・保証されたものではなく変動します。
AI取引機能の拡大
ロビンフッドは、米国で提供しているAI取引機能を暗号資産取引にも拡大する計画を明らかにしました。対象となる利用者は、自身が選択したAIモデルをロビンフッドのデータソースやツールへ接続し、取引戦略の実行に利用できるようになります。
地理的拡大
今回の発表では、以下の地理的拡大も強調されました:
- カナダ:WonderFiの買収完了を受けて正式にサービス開始
- シンガポール:現地法人がシンガポール金融管理局(MAS)から資本市場サービスライセンスを取得
- 英国:暗号資産取引サービスを開始する計画を発表
同社によると、現在は3大陸38カ国で約2,800万人の顧客にサービスを提供しています。
収益環境と人員削減
同社は先月、暗号資産事業の収益が前四半期比34%減少したことを受け、従業員の約1割(約290名)を削減したばかりです。CEOのヴラド・テネフ氏は、今回の削減を「スリムで規律ある組織」を目指すための先手の対応と説明しています。リストラ関連費用として、退職金および福利厚生費約2,000万ドル、株式報酬費用約800万ドルの計約2,800万ドルを見込んでいます。
市場の反応
厳しい収益環境が続く中でも、トークン化株式とDeFiの融合という新事業への評価は好意的に受け止められました。発表後、ロビンフッドの株価は8.35%急騰し、日中最高値109.53ドルを記録した後、108.65ドルで引けました。BTIGは買い判断を維持し、目標株価を125ドルに設定しています。
今後の展望
ロビンフッドは、年内のロビンフッド・チェーンのメインネット公開を目指しており、今後数ヶ月にわたり開発者やパートナーとの連携を拡大していく方針です。また、CEOのテネフ氏は、OpenAIやSpaceXなど未上場企業のトークン化株式を提供する予定があることを明らかにしています。
今後、対応地域の拡大とともに伝統的金融と仮想通貨の垣根がさらに薄れていく展開が予想されます。

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