目次
暗号資産に「情報開示」と「インサイダー規制」が本格導入へ
金融庁が、暗号資産(仮想通貨)を金融商品取引法(金商法)の対象に位置づける方針を固めたと報じられ、大きな注目を集めている。
16日付けの朝日新聞によれば、国内暗号資産交換業者が取り扱う105銘柄を規制対象として優先的に扱う方向で、情報開示義務やインサイダー取引規制を適用する見通しだ。改正案は2026年通常国会で提出される予定とされており、事実上、暗号資産を金融商品として扱う流れが本格化してきた。
規制対象とされる「105銘柄」とは
JVCEA(日本暗号資産取引業協会)が公表する最新データでは、国内で第一種会員が取り扱う暗号資産は119銘柄。
今回の「105銘柄」という数字は、その中から金融庁が優先的に制度の対象と位置づけた銘柄群と考えられている。
これにより、国内取引所で上場している主要銘柄は、「株式のように情報開示が義務化される」段階へ移行する可能性が極めて高い。
適用される可能性のある規制内容
報道によると、金商法の適用に伴い、暗号資産には以下の規制が導入される方向で検討されている。
発行者に関する詳細な情報開示
・発行主体の有無
・プロジェクトの目的、運営体制
・資金用途、トークン分配
株式のEDINET開示に近い形で、投資家が判断材料を得られる仕組みが整備される。
技術面・リスク面の明確化
・採用するブロックチェーンの仕組み
・セキュリティリスク、集中管理リスク
・トークノミクスの変動可能性
これまで事業者依存だった説明が、法的義務に格上げされる。
上場・廃止・破産等に関するインサイダー規制
・取扱開始前の情報漏洩
・上場廃止の内部情報利用
・重大障害、破産手続き
これらが従来の株式と同様、インサイダーとして規制対象となる。
取引所も発行主体も、適切なタイミングで情報を公表しなければならなくなるため、透明性が大きく向上する。
“税制”も大きく変わる可能性:分離課税20%が現実味
今回の報道で特に注目を集めているのが、暗号資産の利益に対する税制見直しだ。
現在、暗号資産の利益は
雑所得扱い → 総合課税(最大55%)
となり、投資家の大きな負担となっている。
しかし、金融庁は暗号資産を金融商品とみなす方針のもと、
株式と同じ分離課税20%の導入が検討されている。
12月に開かれる与党の税制調査会で本格的な審議が行われる予定で、もし実現すれば日本の暗号資産投資環境は大きく改善する。
制度設計のロードマップ:2026年の法改正に向けて
今回の規制強化は突発的に出てきた案ではなく、2024年〜2025年にかけて金融審議会で継続的に議論されてきた論点だ。
今後の予定は以下のとおり。
2025年12月
- 税制調査会で税制の方向性を議論
- 金融審議会が暗号資産制度の報告書を取りまとめ
2026年通常国会
- 金商法の改正案を提出予定
制度化が進めば、暗号資産は株式や投資信託と並ぶ本格的な投資アセットとして認知が進む。
投資家にとってのメリット・注意点
メリット
- 透明性が上がり“安心して投資できる環境”になる
- インサイダーリスクが減少
- 分離課税20%になれば取引回しやすさが飛躍的に向上
- 海外勢に比べ不利だった税制度が改善
注意点
- 情報開示が不十分なプロジェクトは上場維持が難しくなる可能性
- ハイリスク銘柄は今以上に厳しい審査の対象になる
- 場合によっては国内で取扱銘柄が絞られる可能性もある
日本の暗号資産市場は「規制強化」ではなく
“金融商品としての品質向上フェーズに入った”
ともいえる。
まとめ:暗号資産は「金融商品」として新しいステージへ
金融庁による105銘柄への金商法適用方針は、国内暗号資産市場にとって歴史的な転換点となる。
情報開示、インサイダー規制、税制改革といった制度整備が進めば、投資家保護と市場の健全化がともに進む。
2026年の金商法改正に向け、今後は「どの銘柄が優先対象となるのか」「税制がどう決着するのか」が最大の注目点だ。
日本の暗号資産市場は、いよいよ国際基準と肩を並べるフェーズへ入ろうとしている。

![]() |


