SBI VCトレード、ソニー銀行、大和証券グループ本社などが参加する「DeFi(分散型金融)研究会」によるプロジェクトが、金融庁が2017年に設置した「FinTech実証実験ハブ」の支援対象に選定された。同庁が6月6日に発表し、支援案件としては10件目となる。
FinTech実証実験ハブの目的
FinTech実証実験ハブは、フィンテック企業や金融機関などが革新的な金融サービスを社会実装する際に直面する法規制や実務上の課題を整理し、その解決を支援することが狙いである。これまで、ブロックチェーンを活用した顧客の本人確認(KYC)を簡素化するシステムの構築など計9件の実証実験が採択されており、詳細や実証実験の結果は、同庁のホームページから確認できる。
DeFi研究会の実証実験内容
今回採択された実証実験は、金融機関や暗号資産交換業者などの規制事業者を中心に構成されたDeFi研究会によるもので、本人確認が済んだ顧客向けに、DeFiサービスの提供方法を検証していく。実験の想定期間は、今年6月から9月までとしている。
同研究会は銀行、証券会社、信託銀行、暗号資産交換業者などが、顧客とともに安全にDeFiを活用できる環境の整備を目的に設立され、法律家や開発事業者も加わり、規制に準拠したDeFiのあり方を模索している。
参加企業と実証実験の内容
参加企業は以下の8社で、事務局はKPMGジャパンが務めている。
- SBI VC トレード株式会社
- ソニー銀行株式会社
- 株式会社大和証券グループ本社
- 野村ホールディングス株式会社
- ビットバンク株式会社
- みずほ信託銀行株式会社
- 三井住友信託銀行株式会社
- 三菱 UFJ 信託銀行株式会社
リリースによると、実証実験では暗号資産を模した「トークン」を活用し、顧客がDeFiを利用するうえでのマネーロンダリングやテロ資金供与のリスクをどう低減できるかなどを検証していく。具体的には、以下4項目に関する技術的・法的な課題の洗い出しと実現可能性の評価を行うという。
- 金融機関などが管理するホステッド・ウォレット(カストディアル・ウォレット)を保有する顧客へのAMM機能を用いたサービスの提供
- 利用者が自ら管理するアンホステッド・ウォレット(ノンカストディアル・ウォレット)に紐づくアドレスに対する金融機関などによる本人確認が行われたことを示す措置
- 本人確認が行われたことが示されているアドレス間でのみ移転可能なトークンの発行
- 本人確認済み顧客による当該トークンを用いた特定のAMM機能へのアクセス
今後の展望
今後は、実証実験を通じて有効なブロックチェーン技術を見極め、金融庁などの当局と連携しながらDeFiを利用しやすくする環境づくりを進める予定だという。本人確認済みの顧客や金融機関が、法令に準拠したトークンを安心して取り扱える仕組みの整備が期待される。
本件が金融庁に採択されたことは、信託銀行、証券会社、暗号資産交換業者といった従来の枠を超えた多様なプレーヤーが連携し、業界横断的にDeFiに取り組む動きの一端と捉えることもできる。今後の展開にも注目が集まる。

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