2025年3月、SBIホールディングスの代表取締役会長兼社長である北尾吉孝氏が、日本経済新聞社と金融庁が主催するフィンテックをテーマにしたイベント「FIN/SUM(フィンサム)」で単独講演を行いました。この講演では、SBIグループの成長の歴史を振り返りつつ、今後5年間で企業グループを3〜4倍に成長させるという野心的な目標とその実現戦略について語りました。
デジタルスペースへの積極投資
北尾氏は、SBIグループが「デジタルスペース」と呼ぶブロックチェーンや仮想通貨(暗号資産)領域への積極的な投資を強調しました。彼は、インターネットベースのフィンテック1.0からブロックチェーン基盤のフィンテック2.0を経て、現在は「デジタルスペース生態系」の時代に入ったと説明しました。北尾氏は「今世紀最大の革新的技術はブロックチェーン」と断言し、この技術革新をコンドラチェフの波における第6波として位置づけました。
SBIはこの潮流を捉え、「デジタルスペースで徹底的に事業を拡大する」戦略を掲げており、5年間での3〜4倍成長を目指しています。北尾氏は「インターネット時代の組織的優位性は生態系にある」という創業時からの哲学に基づき、デジタルスペース時代に適応したエコシステムの構築を進めています。
仮想通貨市場の急成長
北尾氏は、2018年に出版した著書『これから仮想通貨の大躍進が始まる』で、仮想通貨市場の将来性を早くから予見していました。その予測は的中し、仮想通貨の市場規模は2019年の23兆円から2025年3月6日時点で435.7兆円へと、わずか6年間で約19倍に拡大しました。ビットコインとイーサリアムの時価総額合算は303兆円に達し、東証10兆円超企業の時価総額を大きく上回る規模となっています。
北尾氏は、仮想通貨上位5銘柄の1日あたり取引量が24兆円に達していることを挙げ、仮想通貨市場の急成長を強調しました。また、リップル社およびXRPの躍進についても触れ、これらの動きが国際決済システムの転換期の到来を示していると指摘しました。
トランプ政権と米国の仮想通貨戦略
北尾氏は、トランプ大統領の就任と仮想通貨政策の関係についても詳細に解説しました。トランプ大統領は「デジタル金融技術における米国のリーダーシップの強化」と題した大統領令に署名し、デジタル資産市場に関する大統領作業部会を設立しました。この大統領令は、自己管理する権利の認定やドル連動型ステーブルコインの発展促進、米国内での中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行禁止などを含んでいます。
北尾氏は、ドルの基軸通貨体制が揺らぐ中で、ビットコインなどの仮想通貨を活用し、アメリカが主導権を取れるデジタル世界を構築する戦略を分析しました。
SBIグループの仮想通貨戦略
SBIグループは、暗号資産取引所「SBI VCトレード」と「ビットポイント」を運営し、取引所の預かり資産残高は合計で6,000億円を超え、顧客数も100万口座を突破しました。さらに、DMMビットコインの買収により、口座数は170万に拡大する見込みです。
北尾氏は「日本一の暗号資産交換業者に必ずなる」と自信を見せ、SBIグループが以下の取り組みを積極的に展開していることを紹介しました。
- ステーキングサービスの成長
- 世界最大級のマーケットメーカーB2C2の買収
- ブロックチェーンゲームプラットフォームとの戦略的業務提携
- 堂島取引所での仮想通貨先物取引の準備
- 国内における仮想通貨ETFの準備
- セキュリティトークン(ST)の発行・流通プラットフォーム「大阪デジタルエクスチェンジ」の運営
- ステーブルコイン「USDC」の日本展開
メディア戦略とデジタルエコシステム
北尾氏は、SNSなどのインターネットメディアをフル活用し、メディア・IT・金融を融合した生態系を構築する方針を示しました。彼は「ネットがテレビを凌駕している」と指摘し、SNS戦略が選挙結果に影響を与える時代が到来していることを強調しました。
SBIグループは、SNS専門チームの立ち上げや地域メディアとの提携、インフルエンサーとのオープンアライアンス戦略など、多角的なアプローチを進めています。
まとめ
北尾氏の講演は、新たな「デジタルスペース」時代の到来を強く感じさせるものでした。ブロックチェーン技術をコンドラチェフの波における第6波の中核技術と位置づけ、仮想通貨市場の大躍進を現実のものとしたSBIグループは、この波に乗り、取引所運営からステーブルコイン「USDC」発行まで多角的に事業展開し、総合的なデジタルエコシステムの構築を目指しています。北尾氏が掲げる「5年間で3〜4倍の成長」は、このデジタルスペース戦略の成否にかかっていると言えるでしょう。

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