2026年4月21日、コインベース(Coinbase)は「量子コンピューティング・ブロックチェーン独立諮問委員会(Coinbase Independent Advisory Board on Quantum Computing and Blockchain)」の初となる提言書を発表しました。この文書は、スタンフォード大学、テキサス大学オースティン校、イーサリアム・ファウンデーション(Ethereum Foundation)、アイゲン・ラボス(Eigen Labs)など、6つの機関の研究者によって共同で作成された約50ページの内容です。
提言書の主な内容
提言書では、量子コンピュータがブロックチェーンセキュリティに与えるリスクを各チェーンごとに体系的に評価しています。特に注目すべきは、仮想通貨ごとのリスクの違いです。
ビットコイン(BTC)の評価
ビットコインに関しては、マイニング、ハッシュ関数、過去の取引記録が量子コンピュータによる脅威をほとんど受けないと評価されています。米投資銀行バーンスタインの分析によると、ビットコインの価格が過去最高値から約50%下落した要因の一つとして、量子コンピュータの脅威はすでに市場に織り込まれており、実存的危機ではなく管理可能なリスクとされています。
プルーフ・オブ・ステーク(PoS)チェーンの脆弱性
一方、イーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)などのプルーフ・オブ・ステーク(PoS)チェーンは、ネットワークを保護するバリデータの署名方式に追加の脆弱性があると指摘されています。PoSチェーンでは、バリデータがブロック承認のたびに署名を行い、そのデータがオンチェーン上に蓄積されます。将来的に量子コンピュータがその署名データから秘密鍵を逆算できる可能性があるため、ハッシュ関数ベースのプルーフ・オブ・ワーク(PoW)とは異なるリスクを抱えています。
共通の脆弱性
全チェーンに共通する脆弱性として、ウォレット層のデジタル署名が挙げられます。この署名は資産の所有証明に使用され、十分な処理能力を持つ量子コンピュータによって解読される恐れがあります。ビットコインでは、公開鍵がオンチェーン上で可視状態にあるウォレットに約690万BTCが存在すると試算されており、これらのウォレットが最も露出度が高いとされています。
業界の対応と今後の展望
イーサリアムはこの課題に対応するためのレイヤー1アップグレードのロードマップを公表しており、ソラナやアルゴランド(Algorand)、アプトス(Aptos)も量子耐性オプションの提供や計画を進めています。コインベースは「緊急になってから対応するのでは遅い」とし、今が準備を始める適切な時期であると強調しています。
米国立標準技術研究所(NIST)は複数の量子耐性暗号方式を標準化しており、業界での採用準備は整いつつあります。しかし、量子耐性署名はデータサイズが大幅に増大し、トランザクション速度やコスト、ストレージに影響を及ぼすため、分散型ネットワーク上で数百万のウォレットを移行させるには全ユーザーの対応が必要となります。
コインベースは、暗号標準の迅速な採用に対応できる柔軟なシステム構築を進めており、アップグレードを実行しないまま放置されたウォレットの扱いについて、各ブロックチェーンコミュニティが方針を決定し早期に公表することを勧告しています。
結論
量子コンピュータの進化に伴い、ブロックチェーン技術のセキュリティも新たな課題に直面しています。業界全体での早期対応が求められる中、コインベースの提言書は重要な指針となるでしょう。

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