新たな原子系「多価ミュオンイオン」の観測に成功

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2025年6月19日、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と東京都立大学を中心とした研究グループが、エキゾチックな原子系「多価ミュオンイオン」の観測に成功したことを発表しました。この成果は、理論的には存在が予測されていたものの、実験的に直接観測されたのは初めてのことです。

研究の背景

多価ミュオンイオンは、1つの原子核が少数の電子と負電荷を帯びた素粒子「負ミュオン」を同時に束縛した原子系です。これまでの研究では、負ミュオンは通常の電子と異なる特性を持ち、原子や分子との相互作用において新たな視点を提供する可能性があると考えられていました。しかし、実際にこのような原子系が観測されることはなく、理論的な予測に留まっていました。

研究の詳細

この研究は、東京都立大学大学院理学研究科の奥村拓馬准教授を中心に、理化学研究所の東俊行主任研究員、橋本直リーダー、KEKの早川亮大研究員など、多くの研究者が参加しました。彼らは、最先端のX線検出器である「超伝導転移端センサーマイクロカロリメータ(Transition-Edge Sensor: TES)」を駆使して、多価ミュオンイオンの観測を実現しました。

観測された多価ミュオンイオンには、μAr16+、μAr15+、μAr14+が含まれます。これらはそれぞれ、負ミュオンに加えて電子を1、2、または3個束縛している状態です。このような構造は、正電荷を持つ原子核が異なる負電荷を持つ粒子を同時に束縛するという、他に類を見ないユニークなものです。

研究の意義

多価ミュオンイオンの観測は、量子少数多体系としての新たな研究の可能性を示唆しています。特に、負ミュオンと原子・分子との相互作用を探る新たなプローブとしての役割が期待されます。この発見は、物理学や化学の分野における新しい知見を提供し、今後の研究に大きな影響を与えることが予想されます。

研究成果の発表

この研究成果は、科学雑誌『Physical Review Letters』のEditors’ Suggestionに選ばれ、2025年6月16日付でオンライン版に掲載されました。研究チームは、今後もこの分野での研究を進め、さらなる発見を目指していくとしています。

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